窓のない治療院より

病床で麻痺していく 昏睡と薄明かりの日々
誰かが僕の顔を見ていることもあれば
誰も居ない蛍光灯だけが温もりの夜もある


目が覚める度に
繋がれているチューブを見る
舌が縺れ
視界がぼやける
頭の芯が痺れ
君に対する感情が希薄していく


僕は 君を忘れるのが怖いんじゃない
僕は 君が誰か分からなくなるのが怖いんだ


古い思い出を忘れてしまうことなんて構わない
新しい思い出になる出来事を 君と作り出せないことが怖いんだ


目が覚めて気付く
最近 現実のまどろみよりも
夢見た刹那の方が 記憶に鮮明であることに