とある台本(戯れに書きかけたもの)の一部。2。

成川、自分の顔を覆いながら舞台左端から登場。左を見ながら後退りする。
「僕はもう耐えられない。この追い詰められていく感覚、破滅に進んでいく切迫した緊張。僕にはもう何もかもが耐えられない。内側から抉られて、別の何かで埋まっていくような、吐き気のするこの気持ち。ああ、きっとこの路地裏が僕の最期なんだ。行き止ってしまえばきっとこの先には何も無い。ああ、ああ。このままゴミに埋もれて死ぬ。死ぬんだ」
最初はブツブツと、段々大きな声で感情的に独言しつつ、何かに追い詰められるように、ズザズザと音を立てるような感じで、足摺りして後退。
「僕は何も変われなかった。僕には何も変えられなかった。……そう、理不尽過ぎるこの物語を僕あ何も変えられなかったんだ! 僕は、僕は何とかしようとして、色々、色々試してみたっていうのに! なのに……僕は散々人を殺してしまったというのに、物語は着々と終わりを迎えようとしている。何故? この物語の結末を知っている僕が何をしても、台本に書かれていることは何の変更も無く進んでいくというのか? もう駄目だ。僕には殺される相手なんか存在しないはずなのに、その可能性がある人間は全て殺したというのに! 鶴見も、竹丘も七瀬も志水も全部全部! なのに、何で僕はこうやって追い詰められているんだ? ああもう駄目だ! せめて、せめて僕だけは、僕だけは台本通りになんてならないぞ、救いも情け容赦もないこの物語で殺されるなんてまっぴらだ! 僕は、僕は!」
どんどん後退り、右端付近で尻餅をつく。ついた手の平にはナイフ(自殺できる様なものであれば何でも良い。ナイフは玩具の、刺せば刀身が凹む物が良い)。
ハッと我に返り、両手でナイフを握り締める。少し躊躇。
「そうだ、ここで僕はナイフを見つけて……それから、僕は」(途中、物語の核心のため伏せます)
「あああああああああああああああああああ」と力なく言いながら、首筋にゆっくりナイフを突き立て、突き刺しきった時点でそのまま暗転。暗転後も10秒ほどああああを続ける。