おばあちゃん。

ぼくはおばあちゃんが大好きだ。
おばあちゃんはぼくの家の2階に住んでいるんだけど、足が悪くて買いものに行けなかったので、ぼくにおつかいをたのんだ。
5百円玉を1まいわたして、たばこを2つ買ってくるようにいう。
すると、のこったおつりでココア味のたばこみたいなおかしを買っていいといってくれた。
ぼくはそれが大好きでおつかいのたびに買った。それを買ってくれるおばあちゃんも大好きだ。

けど、おばあちゃんは死んでしまった。
のどのガンだとお母さんはいっていて、たばこが悪かったともいった。
おつかいに行ったぼくのせいだって思って泣きそうになったけど、お母さんは
「将がおばあちゃんといっしょにいてくれたからおばあちゃんは幸せだったよ」といったので、元気になった。
お父さんのお母さんだったので、おそうしきの時にお父さんは泣いたけど、お母さんは泣かなかった。

ぼくは大好きだったおばあちゃんと遊んだ部屋に入って、なにかおばあちゃんのものをもらおうと思った。
小さなテーブルの引きだしにはわからないものがたくさんあったけど、あんまり知らないものなのでとらなかった。
そして、いつもおばあちゃんが、ぼくが泣いたときにいつもふいてくれたハンカチがたんすの中に入っていることを思い出したので、
ぼくはいつもおばあちゃんがハンカチを出してくれたいつもの段のひきだしをあけた。

そこにはおばあちゃんがねていて、ぼくを見るとニッコリと笑って5百円玉をわたした。
たばこ、買ってきてくれるかい?っていったので、ぼくは「うん」っていっていつものハイライトを2つ買って、ココア味のたばこも買って帰った。
おばあちゃんにそれをわたすと、おばあちゃんは1本たばこを出してマッチをこすって火をたばこにつけて、フーっとやった。
ぼくもまねしてスーっとやった。
おばあちゃんはわらって、またフーってやったのでぼくはまたスーってやった。
ぼくもおばあちゃんもたばこが終わったので、おばあちゃんは「ひきだしをしめておくれ」といった。
ぼくは「いいよ」といってしめた。
だけど、おばあちゃんがいなくなっちゃうかもしれないと思ってもういちどすばやく開けたらまだいたので安心してしめた。

次の日、お母さんは死んだ。
のどのガンだっていったけど、お母さんはたばこをすわないからだいじょうぶだと思った。
お母さんのおみそ汁にだけ、少しだけ変な薬が入っていたそうだ。
お父さんのつまだったので、おそうしきの時にお父さんは泣いたけど、おばあちゃんは「じごうじとくだ」っていってまた5百円玉をわたした。