a 異常.

僕が君を愛している事に変わりは無いと思うんだが、そこの所を君はどう考えているのか、僕には興味がある。
僕は毎日のモーニングコールは未だ欠かさないし、君の好きなオムレツにだって一工夫して飽きがこないようにしている。
今日はピザ・チーズを入れてみたし、昨日だってクリームスープで煮た温野菜を中に入れておいた。
それを君は今まで美味しそうに食べていたし、一度も「もう、オムレツなんて飽きたからチキンナゲットを食べさせてよ」なんて言ったこともなかった。
ジャムだって君が美味しいと言ってくれた手作りのジャムだし、デパートで買った美味しいクロワッサンにとても合うマーマレードだ。
コーヒーだってブルーマウンテンを濃く淹れたのを、その苦味を打ち消すくらいのカロリーオフシュガーを加えて、沸騰しているんじゃないかってくらい熱いままカップに注いでいる。
これらは全部君のためにしてきた事だし、君が喜ぶと思ってきたからこそやってきた。
全部が全部、君が好きなものを美味しく、栄養も考えてやったことなんだよ。

なのに、君はさっきからずっと起きてこない。
君は午前8時30分には出発しないといけない仕事をしている。
準備には時間が掛かるし、特に君は朝のシャワーが長いからね。
起きる時間は午前7時丁度だ。何時もそうやってきたじゃないか。
だから僕は君が起きる1時間前には既に起きていたし、君が起きる5分前には朝食の準備も万全だったんだよ、何時も通りにね。
野菜たっぷりのコンソメスープにピザ・チーズ入りのオムレツ。自家製マーマレードだって昨日作ったばっかりだ。
あとは最近君が好きになったっていったヨーグルトとブルーベリーをデザートに冷やしておいた。
で、今日も君の美味しそうな笑顔を見られると、自信満々になって君を起こしに来たのさ。
君は昨日だって早く寝たし、具合も特別悪そうじゃなかった。
神経質な君を朝、僕の起床による雑音で起こさないように、寝室を別にまでしたんだ。
それに、寝る前に欠かさないスコッチをきっちりダブルで2杯付き合ったじゃないか。
熟睡できただろう? 御休みのキスだって君は眠たそうに、緩慢な舌の動きをしていたよ。

それなのに、何で君は起きないんだ。
寝起きが良い方では無いってことくらいは知っているけど、それでも5分もかからず起きれるじゃないか。
今ではオムレツのチーズだって固まってしまっている。もう噛み切ろうとしても出来ないくらい伸びることは無いだろう。
ヨーグルトなんかはもう凍ってしまっているかもしれない。
何せ、急いで冷やさなくちゃいけなかったから冷凍庫に入れたんだ。
だって、君はキンキンに冷やしたヨーグルとが好きじゃないか。
もう、僕が1時間かけて作った朝食はその味を底辺にまで落としているんだよ。
僕の努力は、もう生ゴミの量産と同じ意味でしかないってことだ。

これだけの苦労を続けてきたのも君を愛しているからだし、こうやって辛い気持ちになってもまだ君を愛している事に変わりは無い。
きっと明日も同じくらい頑張って料理を作るし、こうやって駄目にされたら同じく傷つく。
でも、君にだって食欲のない日はあるだろうから、食べたくないって言っても僕は怒らなかった。
もし僕に、君にとって嫌な事があったら言って欲しいんだ。
僕はその事で君を嫌いになったりしないし、出来る限り直していきたいんだよ。
そうする事で、僕の料理を食べてまた幸せな笑顔を見せてくれるんだったら、何でも頑張って見せるさ。

ほら、僕がこれだけ君のことを愛しているって分かっただろう?
だったら、君はそれについてどう思っているか教えてくれないか。
僕は主夫だから経済的な収入はない。
君は働きたくてもリストラされて、再就職先も見つからないままで無職だった。
確かに不安もあっただろう。僕だってパートを探していたんだよ、僕だって不安なんだ。
君が不眠症になった時だってスコッチっていう最良の薬を提案したし、最善の量であるダブル2杯も僕が定めた。
それで君は一時期ほどの不安定さからグッと持ち直して、今ではしっかり健康でポジティブであるように見える。
再就職だってつい先月決まったばかりじゃないか。
やっとこれで君と僕の新しい生活にも光が見えてきたぞって、やっと思ええてきたところなのに。
これじゃ朝食を抜きにして仕事に行っても間に合わない。完全な遅刻だよ。
もしかしたらもう会社を首にされるかもしれない。それって最低だよ。遅刻して終わりだなんて。

確かに、生活費に困ったから君を殺して保険金をせしめようと思って、事実実行してみせたさ。
でも、君だって僕を愛しているのだったら仕事くらいできるだろう?
だって、僕は毎日君に朝食を駄目にされても、それでも毎日朝食を作っている。
だったら君は、たった一日自分を駄目にされたからって仕事を休んで良い訳ないじゃないか。
ほら、不貞腐れてないで会社に行くんだよ。
何時まで寝ているんだい、愛しのハニー。