私の罪に神の慈悲があるのならば。

「何故、言ってくれなかったんだ」
俺は、口から塊を出すような気持ちで言葉を吐いた。
「そんなつもりはなかったんだよ……結果的にそうなっちまっただけで」
奴は、自嘲的でくたくたに疲れ切った笑みを浮かべ、俺の足元を見下して呟いた。
「翼があっても、この星から飛びたてるほど高く飛べるわけじゃない。だがそれでも、俺たちは鳥に憧れるんだ。
 この糞だめのような地べたよりは、よっぽどマシなんじゃねぇかって思って空を見る。
 この星が文字通り腐りきってしまう前に少しでも高いところへ。何時かは駄目になってしまっても、少しでも長く正気でいたい。
 でも結局、俺たちがいくら望んでも背中から翼は生えてこない。遠すぎる空を見上げるばっかりだ。
 何でかな……俺たちは本能的に狂う事を望んでいるのだろうか。
 でも、俺の頭の中ではそれを拒絶していた。だから、俺は翼の生えない背中を憎んだ。
 それだけの話なんだ、本当にただそれだけの。だから、俺は」
「だから、おまえは空を見上げるばかりで、地面に咲く健気な花々を踏みにじったことに気付かなかった」
「健気な花々……ね。あんたらしい堅苦しい言い方だよな。けどまぁ、そう。俺は気付く余裕もなかった」
「一言、いってくれさえしてくれれば、俺はおまえを、おまえを」
俺は拳を握り締めた。掌からは尖った爪が食い込み血が流れている感触がある。
「なぁ」
救いを求める人間はこういう顔をするのだろうかと思えるほど弱弱しく、眩しげに俺を見上げた。
一瞬、彼との会話を続ける事に躊躇いを感じたが、過去が俺の口を開いた。
「なんだよ」
弱く苛立たしげだった棘のある口調である事は自覚したが、それが彼を罪の所為か、彼の死が遠慮なく彼を蝕んで咀嚼し飲み込もうとしているからかは分からなかった。
「今更なんだが、死ぬ前に言わせてくれよ」
彼の顔は蒼白だ。だが、俺もきっと似たように張り詰めた神経の糸をどうにか保とうと、顔を白くさせているに違いない。
「遅いよ、何もかも」
だんだん、息苦しく何も考えられなくなってきた。自分が呼吸を忘れてしまったのではないかと、耳鳴りのする頭の中でぼんやり思った。
「そう言うなよ、口に出すくらいタダじゃねぇか」
奴は半笑いだった顔を一気に無表情に引き締めて、その後暖かい笑顔になった。
腹に受けた銃弾のことなんかすっかり忘れてしまったかのような、大好きだったあの頃のように。
「……ハッピーバースデイ」
そして、その言葉が彼の全てを消費してしまったかのように、彼はへたり込むように座り、もうそのまま起きてくる事はなかった。



だ れ も い わ っ て く れ ね ぇ の な


ハッピーバースデイお〜れ〜!ハッピーバースデイお〜れ〜!
ハッピーバースデイディアお〜れ〜!
ハッピーバースデイお〜れ〜!


今晩和。21歳大学生にして友人居ない歴21年の麝香です。(セルフハッピーバースデイ)
本日12/22は私の誕生日で御座いまして、わくわくして祝言の嵐を予感していた訳ですよ奥さん。
そうしたらもう誰一人メールとかくんねぇのな。
もうこうなったらにやにやしながら「今日俺誕生日なんですよ〜」とか言いながら大学内を闊歩しようとしたんですけど



って、朝方ニヤニヤしながら日記書いてたんですよ。
この日記見れば嫌でもおめでとうとか言って貰えるんじゃね?ヘヘヘ、なんて思っていた訳ですよ。
忘年会参加連中にとっては祝意二重取りじゃ祝え祝え〜みたいなハイテンションで。
授業も最後だしこれで就活が終わるまでの最後の息抜きを堪能できるぞって思った訳です。



それがもう、今日のゼミで全部 ぶ ち 壊 し で す よ


21歳の誕生日という記念すべき日すら屁にもならないこの怒髪天をつく勢いの憤怒をどうしてくれようとそればかり考えて今日は帰途につきました。
具体的にどう切れたかというとまぁ前回と同じく「低能は死ね」に集約されるわけですけれど、これがもう度を増して非道くなりました。思わず「こいつらが俺の怒りを呼び起こす糞野郎どもだ」と名前まで記憶しましたからね。今回は自分の保身のため名前は伏せますけど(本名出して罵ったらどうやったってヒートアップしてしまい実際殺しに行きかねない)3人ほどド低能さんがいらっしゃいました。
就活目前の21歳になった野郎が他人のプレゼン中にぺちゃくちゃ喋るんじゃねぇよ。
男同士で糞する穴より臭そうな息吐きながらニヤニヤニヤニヤしやがって、オマエラゲイか。
その場でケツ突き合うんじゃないかって思うほど口と耳を近づけて御密談ですが、寧ろいっその事そうしてくれた方が潔いわ。いいよ、ゲロ吐きそうなほど気持ち悪いけど見てやるよ。ゲロ吐きそうなくらい気持ち悪くてもコソコソ喋ってしかもそれが他人の迷惑になる程度の騒音になっている事に気付かねぇオマエラ見るより数倍はまだマシってもんだわ。
これが同じ大学に棲息するのかと思うともう本当に死にたい。というか殺したい。


いやね、低能同士が何の意味も成さない「グーグルで各自3分間調べた方が有意義」なプレゼンやってる時ならいくら五月蝿くても良いんですよ。だってその中の1人なんて俺に助けを乞うもんだから、実際に数分調べただけのアウトラインをメールで教えたら本当にその通りにしか発表しやがらなくて流石の教授も呆れて指摘したら「何で俺だけ」みたいなこと言ってましたからね。
いや、もう君だけじゃなくて大概の奴が底辺に近い発表しかしていないんですよ。君より下が大勢いても君だって大概は最低のラインにへばりついてる底辺sなんです。だから、イチイチ自己弁護してんじゃねぇよ他人のパクって何の努力もせずにはい終わりか? 舐めんな。
で、まぁ本当に俺が調べた方がまだまともに調べた方がマシなもんだから五月蝿くても構いません。ああ、クズがクズの足引っ張ってるなぁって思うだけだもの。

で、重要なのはここ。


俺は、いくら発表が手抜きで駄目で失敗でも全く許す気持ちでいるということ。


丸パクりで発表、大いに結構。彼女に振られたとかバイトが忙しいとか理由にもならない理由こいて哀れみ誘ってたけど(まぁあれも自己憐憫の一種だわ、今思えば)あの時の俺は本当に友人だと彼を見ていて助けてあげたいと思っていたし自分の資料作成もギリギリだったのに手伝った。感謝してもらったのは素直に嬉しかったし、まぁ本当にどうしょうもないレベルだったけど彼が発表を終えたら自分のことのように安堵した。彼は学則に全く関係ない理由(バイトが忙しいと大学の成績が優遇されるのか? あ?)で自分の努力を怠って失敗してグループ発表の時に見せた彼の努力から見ると本当に台無しってくらいのレベルだったけど自業自得で彼の身には全く何のプラスにもならなかったけどそれは彼の選択したことであってそれを手伝ったのも俺の選択だ。後悔はして無いしきっと彼も自分の努力以上には報われていると思っていることだろう。何せ努力はほぼゼロなんだからそこで不平を言われても知ったことではない。


ただ、他人の発表まで邪魔することないだろう。
ゼミの間じゃないと出来ない話だったのか? 帰り際とか、メールなんかで済む話じゃなかったのかよ。
今日だって、あんだけ発表したのにまともだったのは辛うじて1〜2人くらいだったけど、その彼らの発表の間ですら喋ってやがったからな、オマエラ。
幼稚園のときでもママの腹の中に居る時でも、もういっそのこと前世でも今日の昼飯前とかでも良いんだけど、自分がされて嫌な事は他人にしちゃいけませんよって教わらなかったのか?
まともな発表をした1〜2人の中でも、1年の必修語学のときから友人だった彼はとても良い出来のパワーポイント作ってきていて、とてもじゃないけど数時間でできるような代物じゃない素晴らしい準備をしていた。
バンドで忙しくて本当に寝る間もなさそうな彼だけに、あのレベルで発表を終えることは大変だったと思う。掛け値なしで彼を見直した。
それをさ、オマエラ何くっ喋べってやがるんだよ。
バイトが忙しくて彼女に振られて大変だったつって他人に泣きつくオマエが、何でバンドで忙しい彼の発表を邪魔できるんだ? 多忙でも頑張ってアレを作ってきた彼の心情を、何で少しも分かってやれないんだ。


さて、もう文句も言い飽きたし不毛だから止めるとして、今日の決め事を発表。


教授に抗議文書いて、それでも授業態度が腐ってる奴等の評価が高かったらゼミの変更を申し込むかその抗議文を他の教授にもバラまいて少しでも教授の頭の中を引き締めてやる。


自分の事しか考えてないオマエのことだからこんなこと書いてあるの見たら「はぁ? 殺すよ」とか思ってるんだろうけど、当然だろ?
ゼミ頑張って真面目に聞いてる奴が損しないように努力するのと、オマエラみたいに努力せずに得しようとするのはさ、結局ベクトルは正反対だけど効果は「自分に有利となるためにやること」で変わりないもんな。
一回の欠席も無く遅刻もせず、真面目にやってるつもりの俺がオマエラなんかと一緒の評価でたまるかよ。
頑張ってるのは評価されたいからであって、決してオマエラと同じ位置に居たいからじゃない。
俺にとっては、オマエラがやってる低意識な試みが「はぁ? 殺すよ」になるわけ。
インセンティブとかゲームとかやってる奴だったら分かるよな? すげぇ簡単な表で表せるこの損得勘定。ビックリするくらいナチュラルじゃん。


プレゼンとか授業で下手なことやっても怒らないからさ、頼むから黙れよ。
これ見て少しも悪びれず俺を非難するなら結構。
見切り付けるには十分すぎる理由だわ、そこでそんなリアクション取る火病野郎だって分かったならばな。



私の罪に神の慈悲があるのならば、その分を忌まわしき彼等の罰に。