8人の僕と自殺

「違う」中核の僕が叫んだ
「いや、これで良いのさ」頭の奥にある僕は溜息混じりに言った
「しかし、それでは」背骨の僕は震えながら囁いた
「五月蝿い何もかも壊してしまえ」心臓の僕が絶叫した
「俺は動けない」大腿骨の僕は泣きじゃくった
「痺れちまってるんだ」指先の僕は苛々しげに呟いた
「これ以上血を送るな」血管の僕は総動員で喚いている
「行け、行け、行け、行けよ」頭の前の方にある僕が無感情に言葉を繰り返す
「違う、違うんだ」僕の中核は皆に訴えかけた
「駄目だ。何も違うことなんてない」頭の奥にある僕は自嘲的に言った
「魅力に贖い切れない」背骨の僕は悲鳴を上げた
「全てを壊せないなら俺が壊してやる」心臓の僕は更に血を送った
「本当に動けないんだよ」大腿骨の僕は目を腫らして僕を見上げた
「だが、これくらいなら乗り越えられる」指先の僕は自身に言い聞かせるよう呟いた
「欲しいのは血液じゃない! 酸素だ」血管の僕は怒鳴り散らした
「さぁ、さぁ、行け、行くんだ」頭の前の方にある僕が冷たくなっていく
「違う、僕は、あの娘の事が好きなんだ」中核の僕は懇願した




「駄目だ。それじゃあ帳消しにはならない」頭の奥にある僕が判決を下した
「どうしょうもない全てが壊れないなら俺が壊すしかないんだ」心臓の僕は一瞬静かになって言った
背骨の僕もシンとして、大腿骨の僕が崩れるように座り込んだ
指先の僕は僕全体を押し出して、小さな身体で飛び降りた